MCバトルってなに言ってんの? -解説記事-

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はじめに

こんにちは、菊一文字です。

前々からポケモン以外の趣味についてブログを書きたいなーと思っておりまして、今回重い腰を上げてやっと書くことにしました。

と、いうわけで今回のお題はMCバトルです。

MCバトルというのはいわゆるラップバトルのことです。帽子を斜めにかぶった兄ちゃんが「Yo,Yo」とか言ってるヤツ……というとイメージが湧くでしょうか?

テレビ朝日の「フリースタイルダンジョン」を皮切りに数年前からバトルブームが巻き起こり、最近でも「アメトーーク!」でラップ大好き芸人の回が放送されたり、時たまワイドショーにラッパーが出演したりしています。

しかし、普段HIPHOPを聞かない人からすれば「あの人たち何言ってんの……?」って感じだと思います。

そこで、今回は僕の好きな名バトルを一つ取り上げ、ラップを文字起こしして、それについて解説しながらMCバトルってこんなに面白いんだよ!」ということをお伝えしたいと思います!

注意

※この記事は日本語ラップバトルについてわかりやすく解説することが目的です。十分注意してください。

※文字起こしには聞き違い・ミスがある可能性があります。

※ラップの解釈は僕個人のものです。正解ではありません。

前知識&用語解説

これから書く内容を理解しやすくするためにいくつか前知識と用語解説を載せておきます。

できれば目を通していただきたいですが、かったるい人は読み飛ばしていただいて結構です。

MCバトルのルール

  1. 先攻後攻を決めます。
  2. 決められた小節ずつを交互にラップします。(例えば8小節2ターンなら、先攻8小節→後攻8小節→先攻8小節→後攻8小節)
  3. 観客(もしくは審査員)の判定で勝敗を判定します。

これに加え、フリースタイルバトルであれば即興のラップであることが前提になります。

ビート

ここではラップをのせる音楽のことだと思ってください。「ズクズク」とスクラッチを入れながらDJが流しているアレです。

バトルで使われるビートは、もともと発表されている音源(=楽曲)を使うことが多いですが、そうではないオリジナルを使うこともあります。

ADRENALINE FINAL 2019

今回、題材として取り上げるバトルの大会の名前です。

DJではなくバンドがビートを生演奏しています。

紅桜

岡山県・津山市出身のベテランラッパー。癖のある岡山弁とブルースのような歌い上げが特徴です。

彼から滲み出る凄みはまさしくイメージ通りのコワモテラッパーと言った風ですが、彼の表現する「生き樣」はとても男らしく、聴く人の心を強く打ちます。

呂布カルマ

名古屋出身のベテランラッパー。数々のMCバトル大会で結果を残し、現在フリースタイルダンジョン三代目モンスターに就任しています。

独特の世界観が特徴で、もはや変人とも取れる価値観の持ち主ですが、その中から生み出される彼の言葉は人々の心に鋭く刺さります。Twitterでよく炎上します。

 

あと、なぜだか知らないけどポッキーのサイトにわかりやすいラップ用語解説があったのでこちらもご参照くださいhttps://www.pocky.jp/enjoy/rap/word.html

今回の題材バトル

紅桜 vs 呂布カルマ【ADRENALINE 2019 FINAL】漢 a.k.a. GAMIと呂布カルマが解説!

今回こちらのバトルを題材に解説させていただきます。

バトルは0:59~3:30です。この部分だけでも一度お聞きください。

ビートはTOKONA-Xの「知らざあ言って聞かせやSHOW」。めちゃくちゃ有名な曲です。

8小節4ターン、先攻紅桜、後攻呂布カルマです。

(なるべく内容に元ネタが少ないものとして選んだつもりなのですが、呂布カルマの変人さだけは一旦納得していただかないと途中いくつか「ん?」となります。具体的に言うと①以前呂布がペニバンを咥える動画をあげたこと、②バトルに木片を携帯していること、です。よろしくお願いします。)

バトル解説

ペニバン野郎がどうじゃこうじゃ言うても わしにゃ敵わんし聞こえんぞ
便所の便器で流すか とうとうお疲れさんと
おれが上から 頭のっけから落とす かかと落としじゃなくて
これこけおどしじゃなく言葉のライム 綾が無ぇようにいけ Yo Yo 呂布

「ペニバン野郎」というのは呂布がペニバンを咥える動画をあげたことを言っています。一言目から岡山弁の効いたパンチライン(=決めゼリフ)を出しています。

その後もO(おー)の音で小刻みにライミング(=韻を踏む)を続け、「(無ぇ)よう」「Yo Yo」「呂(布)」と最後まで締めています。小刻みなライムによって非常に聴き心地のいいラップになっています。

さらに「便所」と「とうとう(=TOTO)」で意味でもライムを効かせています。

内容としては「変なやつじゃのう、どんなラップするか聞かせてみぃ」といった具合でしょうか。先攻1ターン目のジャブですね。

紅桜と面と向かい 手に脂汗かいた俺の違い
ペニパンとペニスの違いもわからないやつ モデルガンを持ってる
お前もその類 俺は咥えた方刺されたわけじゃねえ
あのペニパンの使い方しらねえやつは まだここで踊ってらあ

紅桜に対して呂布は「紅桜と面と向かい 手に脂かいた俺のちがい」とまずはライムで応酬します。

続いて呂布の独特の世界観を展開し、ペニバンとペニスの違いをモデルガンと拳銃の違いに例えてアンサーしています。

汲み取ると「ペニバンごときでギャギャー騒いでガキみたいだな」ということでしょうか。正直、呂布の考えは理解しきれませんが、呂布の中でアーティスティックな論理が組み立てられていて、それが妙に説得力を持っているように感じます。

足元見て悪ぃんだけど 俺そのモクメのGRIP見ておれはスリップ
ご立腹してんのは名古屋のやつら 以外にお前らもそうだろ?
与太郎 温度差 これえっさほいさ これライムなら任せな
アドレナリンなら任せな 俺はこいつのアドレナリンより侮れない

「GRIP」「スリップ」「ご立腹」と紅桜はさらにライムで畳み掛けます。

「木目」とは呂布がなぜかいつも持っている木片のことを指していますが、「モクメのGRIP」とはTOKONA-Xのフレーズを引用して作られた曲のことを指し、さらに「モクメのGRIP」には呂布がフィーチャリングで参加しています。

最初に書いたように今回のビートはTOKONA-Xの音源で、もっと言えば、TOKONA-Xは名古屋出身のレジェンドラッパーで呂布の先輩にあたります。

つまり、紅桜はそれ自体高度な意味を持つサンプリング(=引用)をしながらライミングもするという、超高度なラップをしているのです!

(このあたりの伝わりにくいポイントがラップを好きになるかどうかの壁ではあるのですが……)

ともかく、紅桜はこの後もライムをつなげ、「俺はこいつのアドレナリンより侮れない」でばっちりパンチラインを決めてこのターンを締めます。

内容的には「先輩(=TOKONA-X)に顔向けできるようなことしとんか?ライムは俺の方が上じゃけどな」ということでしょうか。このバースは内容ももちろん、紅桜のラップスキルの高さで圧倒されます。

知らねぇやつなんか論外 知ってたってもっかい言わしてもらう
俺が王の中の王だから俺のやることが正当だろう
何が嬉しくて 何が悲しくてバトルやってるって
何が正しいか 勝ちの上にしか価値が築けない世界だからだ

呂布カルマは以前自らのラップについて「吐く言葉全てがパンチライン」と語ったことがあるのですが、このバースはまさにその通りです。

1ターン目と2ターン目で呂布の奇怪な行動にツッコんだ紅桜に対し「俺がの中のだから俺のやることが正ろう」と抜群のライムでアンサーを返します。

思い返せば、紅桜は呂布に対してモクメのGRIP(拳銃のマグナムのグリップを指している)の話をしましたが、その前に呂布は紅桜に対してモデルガンの話をしています……

流石に出来過ぎな気はしますが、呂布の世界観に飲み込まれた気分になります。

さらに呂布は「正当」の根拠を「勝ちの上にしか価値が築けないだからだ」とこれまたシビれるラインで述べています。数々のバトルを圧倒的な強さで勝ち抜いてきた呂布カルマしか言えないセリフです。

つまり、「勝ったやつが正しいんだよ」ということです。わかりやすい。

何を仰る兎さん 王貞治なみのさばる 俺言葉の上で
この音の中のさばる まるでマサカリまさかの話
言葉巧みに寄せる ライムでお前脅しつける
起こしつける ほらもう朝だぞ 全員集合俺一人で十分

紅桜も負けじとライムとビートアプローチを続けます。紅桜の声質とフロウ(=歌い方)がビートにバッチリあっているのがわかります。

「脅しつける」「起こしつける」で韻を踏みながら話を展開させて「俺一人で十分」でもう一度踏みながらオチをつけているのも面白いです。

意味としては最初に歌った「音の中のさばる」から「勝ち負けよりも音楽やっとんじゃ」と言うことが汲み取れます。しかし、あとはライムの話になってしまっているため、話の筋ではまだ呂布カルマに分があるように思えます。

ライムで俺を脅す?それ無理 俺腕っぷし細くたって
言葉の力と閃きだけで屍の山築き上げてきた
その上で流した涙の意味は誰も知らないだろ
落とした種から咲いた花の名前 「呂布カルマ」 覚えとき

このバースでまたも呂布のパンチラインが炸裂します。

まずは、「ライムでお前脅しつける」という紅桜の言葉を捕まえて話を展開させ「言葉の力と閃きだけで屍の山築き上げてき」とパンチラインをぶつけます。

呂布はさらにライミングを続け、「(な)がした」「涙」「ないだ(ろう)」「咲いた」と踏みながら最後に「落とした種から咲いた花の名前 「呂布カルマ」 覚えとき」とパンチラインを繰り出しました。

内容は「お前と違って俺は今まで数多のラッパーを倒して名前を売ってきた」ということでしょうか。強者の孤独感も思わせる情緒的なラップになっています。

俺に言わせろ お前の名前は飽き飽きだぜ もう飽きたぜ もう秋だぜ
食道の秋じゃなく 言葉で1,2 貫通するのはモクメのGRIP
俺はご立腹 女のRIPS 唇につけ ティンバー 便所で流せ小便かBITCH

今度も紅桜は頭で「お前の名前は飽き飽き」とストレートにアンサーを返し「あき」でライミングしていきます。

それからもう一度「モクメのGRIP」でライムを始め「ティンバー」「便所で流せ小便かBITCH」とビートの「知らざあ言って聞かせやSHOW」のサンプリングで締めています。

ここまで言っていたように、確かに紅桜のライムは最後まで心地の良いものになっており、最後も綺麗に締めていることが聞いてもらえればわかると思います。

このバースでの主張は「お前の名前なんかもう飽きてしもたわ」というところでしょう。アンサーとしては薄くなってしまったように感じますが、音楽として抜群にかっこいいラップです。

勘弁しとけよ紅 もうちょっと本気で聞いとくべき
まだこの狭い世界だけで 俺の名前聞き飽きたなんて早ぇよ
まだ誰も知らないおれのことなんて そのへん歩いてたら
お前の母ちゃんや父ちゃんや親戚にもこの顔売るからよ

しかし、最後まで呂布は逃がしません。

呂布にはもう飽きた、という紅桜の話を受けて「俺はこんなもんじゃない」と最高にクールで、かつ、わかりやすいメッセージを紅桜と観客に投げています。

「紅」「べき」、「狭い」「世界」という小刻みなライムも心地よいです。

 

勝者は呂布カルマ。4バース通したアンサーの完成度の高さが観客の心を掴んだのではないでしょうか。

おわりに

これでMCバトルの解説は以上になります。

MCバトルは一見ただの喧嘩に見えますが、その中には音楽的要素や文学的要素が詰まっています。そこがMCバトルの面白さだと僕は思います。

この記事を通して普段ラップやバトルに馴染みのない方々に少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。

今後もHIPHOPや他の趣味の話も記事にできたらいいな、と思っています。

では、また次回の記事でお会いしましょう!

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